2017年8月11日金曜日

ゼリア新薬新人研修自死のニュース「吃音」だったのか そうでなかったのか アウティングだったのか

ゼリア新薬工業の新人研修、新入社員研修によりある男性が自死。
2017年8月8日、9日とニュースが報道された。

――バズフィードジャパンから詳細で丁寧な記事がでる

Kazuki Watanabe
渡辺一樹 BuzzFeed News Reporter, Japan の報道がヤフージャパンのトップトピックスにも掲載され、ヤフージャパンを「ブラウザのスタートページ」にしているユーザーは無意識にそれを見たかもしれない。

https://www.buzzfeed.com/jp/kazukiwatanabe/20170808?utm_term=.ebmZDQBMY#.ikl193pPX

しかし、その後、「本当に吃音だったのか?」、「家族のコメントだと吃音ではなかった?」、「吃音は本人だけが知っていた?」、「上手く吃音を隠していたのに、新人研修でアウティングされた?」、「新人研修の極限ストレスで一時的に心因性吃音になった?」、「というか絶対音感のある人って他人の吃音がすぐわかってしまうの??」などの指摘がSNS上でされています。とくに吃音当時者から。

――毎日新聞記事だと吃音の診断は受けていないという

2017年8月9日報道の毎日新聞記事ではこのようになっている。
https://mainichi.jp/articles/20170809/ddp/012/040/018000c

ゼリア新薬工業(東京都)の男性新入社員(当時22歳)が2013年、入社研修中に男性講師の言動で精神疾患(統合失調症)を発症し過労自殺したとして、東京労働局中央労働基準監督署が労災を認定していたことが分かった。千葉県内に住む男性の両親は8日、同社と講師などを相手取り、約1億510万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。
 労災認定は15年5月。労基署の決定などによると、男性は13年4月の入社直後から8月までの予定で研修を受講。4月10~12日に研修会社実施の「意識行動変革研修」を受けた際、講師から「吃音(きつおん)」と決めつけられ、いじめられた経験を同期入社42人の前で言わされた。5月18日に一時帰宅する途中に都内で自殺した。労基署は労災認定基準の「ひどいいやがらせ、いじめに該当する」と判断した。
 両親によると、男性が吃音と診断されたことはないという。
 ゼリア新薬工業広報部は「まだ訴状を受領していないのでコメントは控えたい」としている。【早川健人】

――Twitter上のつぶやきを紹介
もしも自死された男性がグループの中の生贄の山羊に選ばれていたとしたら本当に言葉で表現できない気持ちになりますね。これは吃音者に限らず、発達障害者、いじめサバイバー、社会的障壁、マイノリティ、さまざまな当事者には深刻なダメージを与えるでしょう。とくに隠していたとかわからないようにして普段生活をしている当事者にとって深刻です。糾弾会、自己批判、フラッシュバック、集団リンチ、人間とはこのような行動ができるのでしょうか。研修という名目だと「これおかしいよ」という感覚は失われてしまうのでしょうか?

――男性は吃音だったのか?

すでに男性は亡くなられているため。真相はわかりません。
1.本当は男性が吃音があった。しかし家族にも言えなかった。
吃音者の一部の人が体得する「独自の鍛錬で吃音状態にならないなんらかの話し方」を発見した。
2.新人研修の極限ストレスにより、一時的に吃音になる。心因性吃音だった。

が考えられます。

――しかし家族や周囲の友人が気づかない吃音をビジネスグランドワークス社はなぜ気づいた?

筆者はここも疑問です。
家族や周囲の友人が気づかない吃音だったして、なぜか新人研修のときの研修でアウティングされる。

となると今回吃音だと指摘され、過去のいじめ体験を無理やり告白させられ、強いストレス、統合失調症になってしまった被害者。そして亡くなってしまった。

この被害者を新人研修した講師や職員が「吃音」をとても詳細に理解していたのではないかという視点がでてきます。

アウティング説明
(アウティングとはセクシャルマイノリティのコミュニティで有名な用語です。自分の属性を勝手に他人にバラされることです。例えば一橋大学で大学生が自死した件

このニュースも渡辺氏が執筆です。
https://www.buzzfeed.com/jp/kazukiwatanabe/20170419?utm_term=.kaD5oVqmW#.dug9Ojon8
一橋大・ゲイだとばらされ転落死「同性愛者を差別する社会が、彼を死に追いやった」ゲイの大学教授が指摘
LINEグループに「おれもうおまえがゲイであることを隠しておくのムリだ。ごめんA」と投稿され……。2017/04/19 17:26
Kazuki Watanabe 渡辺一樹 BuzzFeed News Reporter, Japan)


――まさかと思うがBGW社か講師に吃音当事者が存在した?
仮にアウティングされるとして。
吃音がどういうものか?吃音とはどんな症状なのか?
を丁寧に理解していないとなりません。
軽度吃音を見抜くなんて、よほどの吃音業界関係者でないと難しいです。
フジテレビのとくダネ!の小倉智昭アナウンサーも吃音ですが、丁寧に発語を観察していれば『今、吃ってるよね。吃りそうになったのを回避したよね』なんて話が吃音当事者会で話題にのぼることもあります。

さて、今回の件だと、BGW社の人間か講師が吃音当事者、または家族に吃音者がいたのではないかと推論もできます。

この場合だと、吃音を克服した(独自の話し方や血の滲むような何らかの努力)、または大人になると吃音が消失するタイプだった。と考えられます。

こういう吃音を克服してしまった当事者は吃音を克服していない吃音者に対してマウンティングをします。「私が吃音を治せたのになぜできない?」、「おまえのやり方は間違っている」、「俺が治し方を教えてやろう」、「吃音を治さない奴は甘えだ。怠け者だ」、「そんな話し方じゃ社会人失格だ!」

パターナリズムです。自分の価値観の押し付けですね。
もしもBGW社や関係者に吃音者存在したと仮定して、たまたま被害者が必死に隠していた吃音を見抜かれて、人格攻撃やストレスを与えられたとしたら。同族殺しです。同じ障害や社会的障壁を持った人の中で心無い行為が行われたことにもなります。

このブログでも取り上げている吃音業界の派閥抗争や主義主張問題が暗い影を落としているかもしれません…。


――「大人の発達障害」のように人事業界、雇用側の発達障害アレルギーのため、発達障害発見マニュアルがある?

いや、BGW社に吃音者がいたとは思えない。
人事業界で流行している「発達障害者発見マニュアル」があるんじゃないの?
人事業界や雇用する側では「できるだけ発達障害者を採用したくない」という空気があります。発達障害者を採用するにしても、合理的配慮をしなければいけないとか、本来の一般枠で想定した給与分の仕事を1%でもできない人なら障害者枠で雇用したいという希望があるためです。そのため、発達障害を採用段階や面接段階で見つける手法やマニュアルが販売されています。障害者差別解消法施行後は人事業界の専門誌や社労士など限られた場所で宣伝されたりしています。

ダイヤモンドオンラインから 2017.7.25
「大人の発達障害」への無理解がパワハラ事件の一因になっている
http://diamond.jp/articles/-/135973

日経ビジネスから河合薫の新・リーダー術 上司と部下の力学
発達障害を“流行”させる私たちの自己防衛の牙
無意識下で進めている「カネを生み出さない人」の排除 
2017年2月15日、「あらゆる立場の人々が参画できる社会の構築」を目的とする参議院の「国民生活・経済に関する調査会」参考人質疑が行われた。

 参考人のひとり、東京大学先端研の熊谷晋一郎氏は発達障害が排除に使われていることを指摘
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/200475/021700092/

今回の件、「発達障害発見マニュアル」に吃音のことも詳細に説明が書かれているのではないか?吃音者が吃音を説明するYouTubeにある動画を何度も見て、吃音ラジオなどの音声を何度も聞いて、吃音者の特徴を勉強しているのではないか?とも考えます。

例えば、医療従事者向けの診断基準マニュアルなどは、医療従事者でなくともAmazonで購入できますし、図書館で読むこともできます。発達障害当事者が執筆した書籍(発達障害あるある、発達障害により人生で困ったこと、幼少期や大人時代のいじめ告白、発達障害はどのようなことが症状としてでるのか)などが日本社会にはとても多く出回っています。

実はこれ、執筆した当人は困っている発達障害児者や家族のためになればという気持ちで書いていますが。Amazonなどで購入する人はそういう人だけではありません。人事業界の人間、官民問わず企業団体や組織で採用担当部門で働く者なども書籍を購入します。

すでに組織内で働いている人、働いていた人が起こしたトラブルが「発達障害が原因だった」から、今度から発達障害者を採用しないようにしよう。
発達障害ってどうやったらわかるんだ?



医者が勉強する発達障害の診断基準や症状一覧を読んでみよう



発達障害当事者が書いている本を読んでみよう


なるほど。こういう人は採用しないほうがいいんだな。
こういう話し方をする人は採用しないほうがいいんだな。
目を見て話せない人は採用しないほうがいいんだな。
会社ルールより自分ルールが優先と考えている人は採用しないほうがいいんだな。
こういう意味不明な言動をする人は採用しないほうがいいんだな。
こういう仕草をする人は採用しないほうがいいんだな。
このアイテムや道具やアプリを使っているってことは発達障害かもしれないな。採用しないほうがいいんだな。
こういう失敗を繰り返す人は採用しないほうがいいんだな。
なるほど、こういう風に説明したり接しないといけないということは逆に考えれば
この人は発達障害なんだな。採用しないほうがいいんだな。
この人のインプット方法やアウトプット方法を見ていると発達障害の人が使う解決方法だよな。ということは発達障害の疑いがあるから採用しないほうがいいな。

クソッ。発達障害っぽい人を間違えて採用してしまったよ。合法的に解雇する方法は何かないのかな?←これを解決するためのマニュアルも人事業界では販売されています…。

悪用しようと思えば診断基準や発達障害当事者の人生録、経験、あるある体験を利用できるわけです。

今回の吃音だと指摘されて自死した人も、隠れ吃音者だったが、外部からのとても悪意のあるアウティングにより自らの命を絶つという大きな決断をしたとも推論できます。



――報道機関には、表面的な取材ではなく、もっと掘り下げてほしい

・実は吃音者が研修を実行した組織内にいた?

・アウティングとは何? セクシャルマイノリティだけではなくて発達障害児者の世界でもアウティングがあるんじゃないの?

・新人研修の闇 パワハラ系、軍隊系、人格否定系、人格攻撃系、自分の弱みを告白させる系、理不尽系(本当は聞こえているのに え?きこえなーい もう一回)などの新入社員研修の裏側について丁寧な取材報道する

・吃音と発達障害者支援法について 吃音や発達障害の合理的配慮や障害者差別解消法のこと

・人事業界や採用側、雇用する側に「発達障害者発見ビジネスが蔓延している」のではないか?

・発達障害者(もちろん発達障害に限らずですが)を排除するその思想の根底。内なる植松はなぜ生まれるのか?

などなどの色々な視点から今後も取材報道してほしいと願っています。






お時間のある方は別記事もご覧ください

【重要なお願い】吃音業界は2005年4月から施行の発達障害者支援法を本当に知らなかったのか?なぜ2013年に北海道で吃音看護師が自死したのか
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2016/12/200542013.html

2013年、北海道で吃音看護師が自殺した。だが、本当は自殺を避けられたのである
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2015/11/2013.html

2016年11月27日 東京大学の吃音サークルが吃音業界の不都合な真実を演劇で披露しました
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2016/11/20161127.html

2017年8月8日火曜日

2013年に北海道とは別件で吃音者が自死していたことがわかりました

悲しいお知らせです。
心よりご冥福をお祈りいたします。

2013年は北海道の吃音看護師さんの自死がありましたが。
まさか東京(千葉)でも吃音者の自死があったとはショックです…。



詳細はバズフィードジャパンより 全文はリンク先で
https://www.buzzfeed.com/jp/kazukiwatanabe/20170808?utm_term=.ssj0RPqpp#.xbRmnv4xx

製薬会社・ゼリア新薬工業に勤めていた男性Aさん(当時22歳)が、新入社員研修で「過去のいじめ体験」を告白させられ「吃音」を指摘された直後の2013年5月に自死し、「業務上の死亡だった」として2015年に労災認定を受けた。
Aさんの両親は8月8日、ゼリア新薬と研修を請け負った会社、その講師を相手どって、安全配慮義務違反や不法行為に基づく損害賠償、約1億円を求める訴訟を東京地裁に起こした。千葉県在住の父親(59歳)と代理人の玉木一成弁護士が厚生労働省で記者会見し、明らかにした。
何が起きていたのか。
中央労基署の認定によると、労基署が注目したのは、4月10日〜12日の3日間、ビジネスグランドワークス社が請け負って実施した「意識行動改革研修」。その中で、Aさんの「吃音」や「過去のいじめ」が話題になった。講師から過去の悩みを吐露するよう強く求められた上で、Aさんはこうした話をさせられていたという。
Aさんは、研修報告書に、次のように書き残していた。
「吃音ばかりか、昔にいじめを受けていたことまで悟られていたことを知った時のショックはうまく言葉に表すことができません」
「しかもそれを一番知られたくなかった同期の人々にまで知られてしまったのですから、ショックは数倍増しでした。頭が真っ白になってその後何をどう返答したのか覚えていません」
「涙が出そうになりました」