2015年11月2日月曜日

2013年、北海道で吃音看護師が自殺した。だが、本当は自殺を避けられたのである

別記事紹介【必読】はじめて吃音を知った人へ 吃音・吃音業界と関わる上で絶対に知っておくべきこと 大切な吃音ガイドライン
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2015/11/blog-post.html

2016年11月27日 東京大学の吃音サークルが吃音業界の不都合な真実を演劇で披露しました
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2016/11/20161127.html

【重要なお願い】吃音業界は2005年4月から施行の発達障害者支援法を本当に知らなかったのか?なぜ2013年に北海道で吃音看護師が自死したのか
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2016/12/200542013.html

【詳細な記録必読】吃音が含まれる労働保険審査会資料を精神障害の件、自殺の件 2件紹介
https://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.com/2018/06/2.html


本 文


2013年7月、北海道のある病院に勤めていた看護師が、自ら命を絶った。
吃音看護師は報道によると吃音を咎めれたことが引き金になったように感じる。
実は朝日新聞社が全国紙で吃音者の自殺を報道する前に、北海道新聞社はリアルタイムで報道をしていた。その後、記憶が正しければ報道ステーションサンデー、荻上チキ・Session-22 、困ってるズ!(わたしのフクシ。×シノドスコラボ企画)などでも北海道の吃音看護師自殺の件が報道された。

このニュースの衝撃は大きいものであり、Twitter上でも障害者福祉に携わる人や、社会的弱者、社会的障壁ニュースに興味ある人は多くRTしていた記憶がある。吃音という障害を全く知らない一般の人にも広く知れ渡ったのである。感想としては「吃音ってなに?」、「吃音って障害者手帳とれないの?」、「その病院名公開しろよ!」、「吃音のことこれから気にかけます」、「病院という職場なのに吃音が認識されていないなんてすごいな!」などがあった。

※この時も吃音が発達障害者支援法に定義されていると報道するところは無かった。

本題に入る。
吃音看護師は自殺を避けられたのである。
理由は吃音が2005年から発達障害者支援法に定義されているからである。
発達障害者支援法には2005年4月1日に文部科学省と厚生労働省の事務次官連名通知文『17文科初第16号厚生労働省発障第0401008号平成17年4月1日』が別途通知されている。この通知文がもっとも重要な文書である。

この通知文は、発達障害者支援法における定義が書かれている。


第2  法の概要

(1)  定義について
 「発達障害」の定義については、法第2条第1項において「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう」とされていること。また、法第2条第1項の政令で定める障害は、令第1条において「脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもののうち、言語の障害、協調運動の障害その他厚生労働省令で定める障害」とされていること。さらに、令第1条の規則で定める障害は、「心理的発達の障害並びに行動及び情緒の障害(自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害、言語の障害及び協調運動の障害を除く。)」とされていること。
 これらの規定により想定される、法の対象となる障害は、脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもののうち、ICD-10(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)における「心理的発達の障害(F80-F89)」及び「小児<児童>期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害(F90-F98)」に含まれる障害であること。
 なお、てんかんなどの中枢神経系の疾患、脳外傷や脳血管障害の後遺症が、上記の障害を伴うものである場合においても、法の対象とするものである。(法第2条関係)


この定義によると、世界保健機関(せかいほけんきかん、英: World Health Organization, WHO)が公開しているICD-10(ICD10 国際疾病分類第10版(2003年改訂))に掲載されいているX番からX番までは日本国内において発達障害者支援法に定義されてるというのである。※2015年現在では、発達障害ではないと判明した疾病もある。

また別件であるが。2013年改訂のDSM-5にも吃音が俗に言う発達障害である「ASD(自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害、高機能自閉症など)、ADHD(注意欠陥多動性障害)、LD(学習障害)、チック」などと同じカテゴリである神経発達症群/神経発達障害群 (Neurodevelopmental Disorder)として掲載されている。DSM-5とは米国精神医学会(APA)の精神疾患の診断分類、改訂第5版。精神科医が利用する客観的な尺度が書かれた診察診断マニュアルのようなものである。

2005年4月1日の時点で、吃音は発達障害者支援法に定義される、発達障害者なのである。
ちなみに文部科学省と厚生労働省の事務次官連名通知の宛先は各都道府県知事、各指定都市市長、各都道府県教育委員会教育長、各指定都市教育委員会教育長、各国公私立大学長、各国公私立高等専門学校長宛である。



ここまでの情報をまとめると、吃音者は発達障害者支援法に定義される障害者であり、吃音当事者やその家族や保護者が希望すれば、精神障害者手帳や障害者年金や障害者雇用、社会保障制度を利用できる障害者なのである。


北海道の吃音看護師は自殺する必要はなかったのである。
俗に言う発達障害者同様に選べるメニューがあったのである。

だが、吃音看護師は自殺してしまった。
なぜか?それは下記の理由により、吃音者が利用出来るはずのメニューが選択肢が見える化されていないこと。そもそも病院医師が足りていないのである。

1.吃音者の暗い歴史が関係している。
2.17文科初第16号厚生労働省発障第0401008号が自治体や教育機関に周知徹底されていない。
3.吃音を発達障害者として診療する病院がゼロに近い。精神障害者保健福祉手帳申請診断書を書いてくれる医師がゼロに近い。
4.吃音者は障害者雇用できる。企業の法定雇用率を満たすことができると、総務部人事課、人事採用担当者に知られていない。

1.について
まず2015年11月現在、吃音者の団体は数多い。しかし吃音者は当事者同士で派閥抗争を繰り広げているのある。吃音者には「考え方の違い」というものが存在する。

「吃音は障害者じゃない!障害者と言われるのは恥だ。配慮される存在ではない。堂々と吃れ。吃音は恥ずべきものではない。」
「吃音があることはあるが、上手くそれを隠している。言い換えなどをして社会進出をしている。一般枠で就職しているからそっとしておいてほしい。」
「吃音があって困っている。いじめを受けたこともある。満足に学校に行けなかった。進学も諦めた。なんとか進学もしたが就職活動がうまくいかない。自治体にも相談したが吃音は障害者ではないと門前払いされた。自殺未遂をした。今は実家でひきこもりニートをしている。死にたい。」

と言った具合の異なった派閥があるのである。
特に前者2つは、『吃音が発達障害者支援法に定義されている、発達障害である。』と周知徹底されることすら拒むのである。自分たちが上手くいっているので、それで良し!というのである。吃音で悩んでいる人は努力が足りないと思っているのである。後者の吃音があって困っている人は、辛い日々を送っている。

とある吃音者団体は吃音を発症した子どもに対して「大いに吃れ。恥じるな。吃ってなにが悪い。吃音を治そうと病院に行ってはいけません。親御さんに吃音は障害者ではありません。安心してくださいお父さんお母さん。」と教えているところまである。その団体には小学校や中学校の教員も参加しているのでとても厄介である。2015年現在、幼少期からの早期介入をして吃音にアプローチすれば成人期に吃音を良い方向に持っていけるのだが、その選択肢すら見える化させないのである。もはや宗教の領域である。吃音仲間を増やしたいのである。成人して苦しむ子どもをみた親御さんが後々後悔しても後の祭りである。


このような吃音当事者の対立の歴史が、深い溝が日本国内の吃音情勢に暗い影を落としているのである。1966年に国会質問にて吉川兼光衆院議員が吃音のことを質問したというのにこの有様である。

2015年現在、とある大きな吃音当事者団体が公的な福祉、障害者手帳があったほうがいいのではないか?と方向性を見なおしているようであるが、遅きに失する状態である。

なぜ?誰かが「たった一言、吃音は発達障害者支援法に入っているよ!!」と情報提供をしなかったのか?

※さまざまな発達障害の連合体、発達障害者全国団体であるJDDネットが存在する。
http://jddnet.jp/

この団体には過去に「NPO法人 全国ことばを育む会 」が所属していた。
↓ 2012年ころに一般社団法人 日本発達障害ネットワークを脱退
http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/prdl/jsrd/norma/n294/n294016.html
現在も「一般社団法人 日本言語聴覚士協会」が所属している。

厚生労働省の過去の資料に両団体の名称も記載されています。 PDFです。

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/09/dl/s0924-11c.pdf


それでも 吃音が発達障害者支援法に定義されている!! と周知徹底しなかったのである。
北海道の吃音看護師さん、ニュースにならなかったけれど自殺してしまった吃音者さん。今も自宅でひきこもりをしている吃音者さん。2005年以降はちゃんと社会保障があったのです。

なぜ?誰かが「たった一言、吃音は発達障害者支援法に入っているよ!!」と情報提供をしなかったのか? 死ななくてよい人が死んでいるのある。吃音看護師の遺族の方も2014年7月に突然吃音が発達障害者支援法に定義されていることを知り大きなショックだったかもしれません。なぜなら自殺する決断をするにしても、社会保障という選択肢もあったのですから。しかし吃音者・吃音者団体は派閥抗争により、そのことを隠していたのです。

情報の見える化、なぜできなかったのでしょう…。


2.について
これは吃音当事者なら家族なら理解経験しているかもしれない。
例えば自治体の役所の障害福祉課や福祉課や保健センター、ハローワーク、小学校や中学校に「吃音の相談」をしても、適当にあしらわれるという現実である。子どもならば子どもの吃音を相談しても「大人になれば治りますよ」なんてアドバイスをしてしまうところもあります。また、「吃音で障害者手帳を取得したい」と相談しても「吃音は障害者じゃありませんから!」と相談を打ち切る例もあります。

自治体が運営する病院にも吃音を診療する場所がありません。これは吃音当事者や親御さんが政治・議会に訴えかけ、病院と医師を設置してもらうしかないでしょう。

病院も発達障害者支援法19条にこのように確保しなければならぬと書かれています。
(専門的な医療機関の確保等)
第十九条  都道府県は、専門的に発達障害の診断及び発達支援を行うことができると認める病院又は診療所を確保しなければならない。
2  国及び地方公共団体は、前項の医療機関の相互協力を推進するとともに、同項の医療機関に対し、発達障害者の発達支援等に関する情報の提供その他必要な援助を行うものとする。


3.について
吃音を発達障害者として診療してくれる病院が2015年現在でも極めて少ないのである。
医師も吃音が発達障害とすることに反対する人間もいて、精神障害者保健福祉手帳を取得したいと患者が相談しても、それを拒否する場合まである。また、仮に理解ある医師がいたとしても吃音であることの確定診断を行う技術がないために、診断書を書けないという医師もいる。日本国、厚生労働省による吃音診療ガイドライン策定と全都道府県に吃音専門医を配置するなどの行動が期待される。


4.について
吃音者は発達障害者であることが、企業や経営者や総務部人事課や人事採用担当者に周知徹底されていない現実もある。2018年からは事実上の精神障害者保健福祉手帳所持者も雇用義務化が始まる予定である。吃音者は障害者法定雇用率に貢献できること。是非知ってほしい。
障害者専門就職支援サイトや障害者の就労移行支援事業所も吃音者が障害者であることを是非知ってほしい。



簡単に書いたが、これらが複雑に絡み合い、法律上選ぶことができた「道」が存在したにも関わらず、北海道の吃音看護師は自死してしまったのである。吃音者が吃音者を殺したのかもしれない…。




参考サイト一覧

■吃音看護師が自殺したニュース 朝日新聞社
http://apital.asahi.com/article/news/2014012800001.html

 言葉が出にくかったり、同じ音を繰り返したりする吃音(きつおん)のある男性(当時34)が昨年、札幌市の自宅で自ら命を絶った。職場で吃音が理解されないことを悩んでいたという。自ら望んだ看護師の職に就いて4カ月足らずだった。100人に1人とされる吃音の人を、どう支えればいいのか。学会が創設され、議論が始まっている。
 男性は昨年3月に看護学校を卒業し、札幌市内の病院で働き始めた。
 幼いころから吃音で、話し始める時に言葉がなかなか出てこない「難発」と呼ばれる症状があった。「ん……」と無言が続き、足踏みを繰り返すなどの「随伴(ずいはん)症状」もあった。緊張すると症状はよりひどくなった。
 家族によると、男性は病院で吃音が理解されずに苦しんでいたという。男性は自己紹介の用紙に自分の症状について書き、職場で理解してもらおうとしていた。「大声を出されると萎縮してしまう」「話そうとしているときにせかされると、言葉が出なくなる」
 だが、伝わらなかった。男性が残した手帳には、追い詰められていく様子が書き込まれている。「どもるだけじゃない。言葉が足りない。適性がない」「全てを伝えなければいけないのに、自分にはできない」。その字は、次第に乱れていく。親友には「続けられないかもしれない」とメールを送っていた。
 昨年7月末、病院からの連絡で母が駆けつけると、男性は自宅で死亡していた。携帯電話には家族宛ての未送信メールが残っていた。「相談もせずに申し訳ありません。誰も恨まないでください。もう疲れました……」。後になって、男性が昨年6月ごろからパソコンで「吃音と薬」「新人看護師と死」などを検索していたことも分かった。
■新潮45 2015年9月号 吃音と生きる 4 新人看護師はなぜ死んだか 近藤雄生
http://www.yukikondo.jp/articles

■困ってるズ!(わたしのフクシ。×シノドスコラボ企画) 号外
http://synodos.jp/komatterus

■小児期発症流暢症(吃音)/小児期発症流暢障害(吃音)きつおん・どもり情報最前線!!
http://matome.naver.jp/odai/2142139170911907401

■17文科初第16号厚生労働省発障第0401008号平成17年4月1日
http://www.mhlw.go.jp/topics/2005/04/tp0412-1e.html

■成人吃音者のブログ 吃音症は発達障害であり精神障害者保健福祉手帳の交付対象であることが判明しました。
http://stutteringperson.blogspot.jp/2014/07/blog-post.html

■ICD10 国際疾病分類第10版(2003年改訂)
http://www.dis.h.u-tokyo.ac.jp/byomei/icd10/

■第051回国会 社会労働委員会 第4号昭和四十一年二月二十四日(木曜日)午前十時四十五分開議 1966年国会にて吉川兼光衆院議員が吃音のことを質問した。
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/051/0188/05102240188004a.html

1 件のコメント:

  1. 労働契約法及び労働案税衛生法上の安全配慮義務違反の可能性もあると思っています

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